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ウクライナ大統領選 決選投票の可能性大

ウクライナでは、10月末に予定された大統領選挙を控え、
25(候補者登録をしていた1名は、規定の期限までに
必要な数
[50万人]の支持者署名を提出することができず、
選挙戦から退場)
の立候補者が各地での選挙運動を繰り広
げています。

実質上は、現大統領クチマ氏の全面的バックアップを受
けた現首相のヤヌコーヴィチ候補と、元国立銀行総裁・
元首相で現在野党最大派閥のリーダーであるユシェンコ
候補の一騎打ち状態。

しかし共産党及び社会党の党首も立候補しており、ある
程度の得票が見込まれるため、上記の
2人のうちいずれ
かがただちに過半数の票を得ることはまずないとみられ
ています。

つまり、第
1次投票で1位と2位を占めた候補者の決選投
票が
11月にあるだろう、という見込み。

街中で目立つのは、路傍に並ぶヤヌコーヴィチ氏の巨大
な選挙宣伝看板で、彼自身の笑顔がついたもののほか、
「私はヤヌコーヴィチを支持します」というシリーズがあ
ります。

アテネ・オリンピックで金メダルを得た水泳選手、クラ
フチュク前大統領などの著名人の他、医師とか技師とか
いったちまたの人の写真も登場しています。

新聞や
TVでも、政府寄りのものはこぞってヤヌコーヴィ
チ氏の業績を誇示する報道にはしっています。政府寄り
でない
TV局というのは1チャンネルしかないというのが
現状であり、それもケーブル
TVでしか見られません。

ユシェンコ氏のイメージを傷つける報道も次々になされ
ており、最近では、ユシェンコ氏を支持する野党リーダ
ーの一人ティモシェンコ氏が、ロシアの検察庁から召喚
を受けたというニュースがありましたが、クチマ−ヤヌ
コーヴィチ体制を明らかに支持しているロシアのプーチ
ン政権が協力してのことではないかと疑わせられます。

ティモシェンコ氏は、数年前に野党が団結して行った「ク
チマ無しのウクライナを!」という抗議行動の旗頭の一人
であり、「ヤヌコーヴィチが大統領になれば、彼の出身地
であるドネツクの財閥の利権、また現政権周囲の政商の利
権を守る政府ができるだけ。

ウクライナ国民のための政府にはならない」と明言してお
り、彼女自身の政見や金脈に疑問を持つ人にも、その現政
権に対する一貫した批判の姿勢は評価されています。

一方クチマ大統領は、
823日、独立記念日前夜の集会で
自らの
2期の任期を回顧しつつ、「『クチマ無しのウクライ
ナ』は、永久にありえない」と発言して拍手を浴びましたが、
解釈によっては大変不気味な文句です。

世論調査によれば、ユシェンコ氏の人気がヤヌコーヴィチ
氏をわずかにしのいでいるのですが、投票日が近づくにつ
れてその差が縮まってきているのは、ひょっとして最初か
らそのように操作された数字なのではないかと思ってしま
います。

選挙には国際監視団が参加することになっており、野党は
投票
所での出口調査を行う予定ですが、すでに投票数のごまか
しが懸念されています。

一説によれば、外国に出稼ぎに行っているウクライナ人の
数は、不法就労も含めると
700万人だかに上り、これらの
人たちの在外投票用紙が悪用される
(投票に在外公館に来る
人はごく少ないので
)と噂されています。

 96日、ユシェンコ氏は体調を崩し、ウクライナの病院
で「胃腸型インフルエンザ」との診断を受け治療を施された
ものの病状はさらに悪化、結局オーストリアの病院に入院。

そこでは膵臓炎・胃炎・大腸炎・顔面神経麻痺・頭痛と胸の
痛み・耳炎などの症状が指摘され、毒を盛られた疑いがある
ということになりました。

「食あたりだろう。美食が過ぎたのでは」「選挙参謀に毒見を
してもらっては」などといった、政敵たちによる公然の揶揄
の後、ユシェンコ氏はキエフに戻り、
21日には最高会議で演
説、左顔面をひきつらせながら、「私に起こったことは、食品
や私の嗜好が原因なのではなく、この国の政治体制が元凶な
のだ」と「毒殺未遂」を主張して現政権を正面から批判。

ウクライナで政治家の暗殺は珍しいことではなく、
5年前の
大統領選に際しても、一候補者に手榴弾が投げられるという
暗殺未遂がありました。

その他交通事故で亡くなった野党党首の例もあり、ユシェン
コ氏が代表の野党連合「我らのウクライナ」の一員だった某最
高会議議員は、
2002年に急性膵臓炎という診断名で亡くなっ
ています。同年には、最高議会選挙の立候補者が、選挙の
2
前に自宅
(集合住宅)の玄関で射殺されるという事件がありまし
た。

もっとも、ある私の知人は、「ユシェンコはオーストリアで整
形手術でもして帰ってきたのでは」と大変悪い冗談
(つまり、暗
殺未遂という狂言で同情票を集めようという作戦では、という
疑い
)を口にしていましたが。

 これで話が終わらないのが、刺激的なニュースに決して事欠
くことのないウクライナ政界の偉いところ。

時を置かずして、ウクライナ西部を遊説中のヤヌコーヴィチ氏
が「ユシェンコ支持の急進的ナショナリスト集団」に卵を投げつ
けられ、卵以外に飛んできた「重く鋭利な物体」がヤヌコーヴィ
チ氏を傷つけ、氏は病院に運ばれた……というニュースが流れ
ました。

ところが内務省筋は「飛んできたのは卵だけ」とこの情報を否定。
ウクライナ全体が巨大な藪の中に入りつつあります。

私の若い友人たちは、どちらかというと非政治的な人も含め
ユシェンコ氏を支持して
(というより、ヤヌコーヴィチ氏を大統
領にさせてはならない、という意気込み
)いますが、まがりなり
にも続いている経済成長をテコに、政府は最低賃金や年金・奨学
金の増額などを発表、小麦の豊作を理由にパンの価格も多少引き
下げるなど、露骨な人気取りの施策を打ち出しています。

「民主イニシアティヴ」基金と「社会調査」センターが
8月下旬、18
歳以上の
2,000人を対象に行った世論調査(「あなたの家計をどう
評価しますか」
)によれば、21%の人が「かつかつの暮らし、食費
さえも不足している」という回答を選択。

「食費は足りるが、服や靴を買うのは難しい」が
38%、「生活はで
きるが、家具・
TV・冷蔵庫などを買う(新調する)金はない」が36
%で、これは私の見聞にほぼあてはまる内容です。小さいとはい
え目の前のアメを選ぶか、不安を辞せず政財界の癒着と批判の押
さえ込みに否をつきつけるか、国民の選択は?

首相 イラク撤退を声明
ウクライナ軍 イラク駐留部隊削減へ

9
月初めイラクを訪問したヤヌコーヴィチ首相の「今年末から来
年初めにもイラク駐在ウクライナ部隊の撤収に着手する」という
発言が日本でも報道されたようですが、すでに
82日、首相は「個
人的な意見」と断りながら、ウクライナ部隊の人員削減の可能性を
口にしています。

815日にウクライナ人兵士が無線誘導式地雷により死亡(イラク
での
8人目のウクライナ軍犠牲者。誤射・銃の暴発・自殺による
死者を含む
)した後、ウクライナ軍のイラクからの撤退を「我らの
ウクライナ」・共産党など野党が要求するという事態がありました
(これまでも死者が出るたびに同様の要求がありました)

撤退発言そのものは意外なものではありません。イラクでの戦争
は「自分たちには関係のない戦争
(чужая война)」であり、
ウクライナの部隊派遣はアメリカとの関係を意識した政治的判断だ、
という見方が当地ではかなり一般的なものだと思います。


2005年に米国移住のウクライナ市民は5361人

アメリカ合州国には発展途上国・旧共産圏国などの住民に抽選で
グリーン・カードを提供するという制度があるそうで、このクジに
当たり
2005年アメリカに移住する権利を得たウクライナ人の数は
5,361人と発表されました。

私の知人
Nさんの義弟一家もその数に入っているのですが、Nさん
の話では、義弟は英語ができるわけでもなく、特殊な職能を身に
つけているのでもなく、ただクジ運がよかっただけだとか。アメ
リカのこの制度に


ちなみにヴァスィーリ・マフノ
(同姓のアナーキストとは関係ない)
という、ウクライナ語で書いている40歳の詩人は、この制度で4
前アメリカに移住、最近『ニュー・ヨークに関する
38の詩篇その
他』という詩集をキエフで上梓しました。どんなものか見てみたい
と思います。
          (竹内高明、在キエフ)