最近のウクライナのニュースをまた少し送ります。

ウクライナ原発2基、送電開始 
安全性向上に欧州1億2500万ドル融資の予定

 8月8日、フメリニツキー原発2号炉(出力1,000メガワット)が
送電を開始。12月22日までに出力100%に達する予定で、
そうなればウクライナの総発電量の50%を原子力発電が
占めることになる。この2号炉は1983年に建設が開始されたもの。

しかし1990年、ウクライナ政府による新規原発凍結宣言により
建設は中断。1995年、ウクライナはチェルノブイリ原発の停止と
引き換えに、フメリニツキー原発及びロヴノ原発の建設途中の
原子炉を完成させる資金を提供される、という国際協定が
結ばれた。

しかし、2001年協定は破棄され、結局フメリニツキー原発2号炉と
ロヴノ原発4号炉はウクライナの自己資金及びロシアの投資によって
完成された。

しかし8月11日、フ原発2号炉は稼動後すでに3度運転停止を
行った(うち2回は緊急自動停止装置が働いたため)ことが明らか
になった。職員に危険はなく、環境の汚染もなかったことが強調
されている。

ロヴノ原発4号機については、8月18日稼動の認可が下り、9月20日
から燃料装荷に入り、9月27日には送電を開始する予定。ちなみに
この2つの原子炉の安全性向上のため、EUは8300万ドルの融資を
約束、ヨーロッパ復興開発銀行は4200万ドルを融資の予定。
(『通信員』8月14日号、『キエフ・ポスト』8月19日号)

ウクライナ大統領選の予想得票率
勝利者は? ユシェンコ候補か、ヤヌコーヴィチ候補か

 8月7日から15日にかけ2002人を対象に全ウクライナで行われた
キエフ国際社会学研究所の世論調査によれば、10月末の大統
領選挙での予想得票率は次のようになっている。

元首相・元国立銀行頭取ユシェンコ氏……30%
現首相ヤヌコーヴィチ氏に…………………25%
共産党党首シモネンコ氏に…………………8%
社会党党首マローズ氏に…………………・8%
急進社会党党首ヴィトレンコ氏に…………2%
未定………………………………………19%
候補者全員(計26人)に対する反対票……4%

 最初の投票で過半数を得る候補者が出ないことはほぼ予見で
きるため、第2回の決選投票(第1回投票の上位2者に対して行わ
れる)で誰に投票するか、という問いには、次の回答が出ている。

ユシェンコ氏……39%、ヤヌコーヴィチ氏……37%、まだ決め
ていない……14.5%、両者に反対票……10%。

 結果として大統領になるのは誰だろうか? という問いには
ヤヌコーヴィチ氏……51%、ユシェンコ氏……16%、シモネン
コ氏……1%、マローズ氏……1%。(『日々新聞』8月26日号)

 最後の問いに対する答えがなぜこうなるか、というと、TV(
特に国営チャンネル)や与党寄りの新聞ではすでに露骨な
ヤヌコーヴィチ氏支持・ユシェンコ氏批判の報道が目立っており、
現政権があらゆる手を尽くしてヤヌコーヴィチ氏にてこ入れし
ているのは明らか。

5年前の大統領選の前には、公務員に対する圧力があった
ばかりでなく、税務署の役人が私企業を訪れ、「クチマ氏に
投票しなければ、監査が厳しくなるぞ」といった脅しをかけたという
(私のキエフの知人の証言)。

投票結果のごまかしも今から懸念されている。

キエフ市場爆弾テロ 1人死亡14人重軽傷
ウクライナ人民党員を容疑者として逮捕

8月20日、キエフ市東北のデスニャンスキー地区にあるトロ
エシナ市場のゴミ箱で、連続して2つの爆弾(釘やねじを詰めた
手製のもの)が爆発、14名が重軽傷を負い、1人が死亡。

同市場を仕切っていたマフィアのボスが昨年12月暗殺されて
いることから、マフィアの抗争関連か、あるいはウクライナ軍が
イラクに部隊を派遣していることに対してのテロ行為か、などの
臆測が流れた。

その後、警察により3名の容疑者が逮捕され、1人はウクライナ
人民党のメンバーであると発表された。同党は、「爆発と同党は
無関係であり、『党員』の党員証は偽造」と主張。

人民党が大統領選最有力候補の一人ユシェンコ氏の率いる野党
派閥「我らのウクライナ」に属していることから、同候補のイメージを
傷つけるための陰謀という反論も出ている。

一方、キエフ市は同市場を一時閉鎖し、新しくマーケットの建物を
造ると25日発表、同市場で物品販売に従事していた数千人が
抗議の意を表明して道路を封鎖するという事態を引き起こした。


新聞社『ポストアップ』放火炎上 

大統領選にからむしわざか

また、8月19日早朝にはリヴォフ(リヴィウ)市で、反政府系
の新聞『ポストアップ』(1997年創刊の日刊紙、204,750部を発行)は
編集部が放火され炎上、30万グリヴナ(1ドル=5.3グリヴナ程度)
相当の被害を受けた。

上記ユシェンコ氏は20日、クリミアでの選挙活動中に彼を尾行し
演説を録音していた私服警官が発見された最近の事件に触れ、
この放火も彼に敵対する陣営のしわざであるとして非難。

ウクルテレコム社&オデッサ化学工場の株売却延期

 同じく8月19日、株の43%と95%がそれぞれ売却され民営化
が始まるはずだったウクルテレコム社(有線電話の独占国営企
業)とオデッサの化学工場の株売却を延期するとの大統領令
が発表された。

売却株競売の初値はそれぞれ8億グリヴナと9億グリヴナに
設定されており、10月末の大統領選前にできるだけ多くの民営化を
行おうという、現政権及び現政権にコネのある実業家たちの
申し合わせがあるのでは、という説が流れていた。

しかし延期の理由は、買い手との事前の談合が合意に達しなかった
からでは、との見方もある。ウクルテレコム社の2004年前半期の
売上は4億6300万ドル、昨年同期に比べ21%の成長。オデッサの
化学工場の生産する化学肥料と尿素は、ウクライナの同製品市場の
24%を占めている。(以上、『キエフ・ポスト』8月26日号)

ウクライナ EU善隣第一グループに仲間入り
大統領選の行方が決めてか

ウクライナ、モルドヴァ、ヨルダン、イスラエル、パレスチ
ナ、チュニス、モロッコが、EUの善隣政策(直訳)対象の第1グ
ループに含まれることとなった。

EU側は、9月末には以上7カ国との合意が成立することを
期待している。EUの外交官たちにとり、ウクライナとの関係は、
EUの新しい善隣政策がどれほど強固なものとなり得るかの
主要なテスト・ケースである。

ウクライナの安価な製品と労働力は、EUとウクライナの貿易関係
において問題となる可能性があるからだ。クチマ大統領は柔軟な対
応を見せてはいるが、合意条件がウクライナ側によって実際に
遂行されるかどうかは疑問が残るところ。

10月末の大統領選が民主的に行われるかどうかによって、
EUの善隣諸国の最初のリストからウクライナが削除される
可能性も捨て切れない。(英紙『ファイナンシャル・タイムズ』8月12日号。
『通信員』8月21日号からの孫引き)

 2004.09.02            竹内高明 (キエフ在住)



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