No.10









テント村 撤去のきざしなし
世界注目の再選挙 26日

 1217日、キエフ市議会から、都心のクレシャチク(ロシア語発音。ウクライナ語発音ならフレシャトゥイク)通りの車道を占拠しているテント村の24時間以内の撤去を求める通告が出ました。しかし19日夜現在、テント村はそのまま残っており、撤去のきざしは見えません。土日はいずれにせよ歩行者天国となる区域なのですが。通告が出る以前から、テント村の住人数は減少のようすがあり、またテントが一部歩道に移動してきています。

26日の再選挙が近づき、地方から抗議行動に出て来ていた人たちが投票のため帰郷しつつあるという事情もあります。しかし、テントの場所が移動するとしても、テント村自体は26日まで消滅することはないでしょう。独立広場の仮設ステージはそのまま残っていますが、128日の、再選挙に向けての与野党合意以後、集会は「お休み」状態。

しかし、ユシェンコ氏が当選すればここでただちに祝賀集会が開かれるでしょうし、落選した場合は反政府集会が行われることに疑いの余地はありません。もっとも、再選挙の結果が出るのは来年になることがほぼ確実視されており、そうなると、当落いずれにせよその結果を待ちつつ、ユシェンコ氏支持の歌手などが参加しての「お正月集会」も、このステージを使って催されることになるんでしょうね……たぶん。

ロシアにもアメリカにも傾かない
「オレンジ革命はウクライナ国民の自発的な行動」

今回の大統領選について、ロシアもアメリカもテコ入れはたぶん大いにしていると思いますが、この間の「ウクライナ分裂」騒ぎのいきさつからして、誰が大統領になろうと、ロシア・アメリカのいずれかに大きく傾く政策をとることは難しいでしょう。当面はそれなりに両者に配慮した外交を展開せざるを得ないと思います。

「オレンジ革命」がまっ盛りの頃
(12月初め)、「ユシェンコが大統領になったら、彼に対する『アメリカの後押し』ということを攻撃材料に使う政治家が出てくるのではないか。日本で『アメリカの押し付け憲法』ということを理由に改憲を主張する勢力があるように」と、こちらの若い友人(30歳くらいの男性)に話したところ、「アメリカ製の憲法のどこが悪いのか?」と切り返されました。「オレンジ革命の最初のはずみは、残念ながらアメリカが与えたものかもしれない。でも我々が抗議に立ち上がったのは自発的な行為だ」というのです。

 別の若い知人の女性(20代前半)は、「ウクライナ人がここまでやれるとは思わなかった。しかも流血を見ず、平和裡にことが進んだのはすばらしい。でも、もし結局ヤヌコーヴィチが大統領になれば、子どものことを考えて、家族でどこかに移住しちゃうかも……」とコメント。

一方、
50代前半の女性の知人(2人は「西側」の国に住んでいる)は、「私は基本的に誰のことも信用しないし、人が集まるところは嫌いなので、選挙にも行かない。しかし、クチマがこれまでマフィアに対し弱腰で、まともに対応できなかったのを考えると、自分自身マフィアであるヤヌコーヴィチは、マフィアにどう対するべきかを心得ているだろう()。それに彼は貧しい階層の出身、庶民のことがわかるはずだ。

ユシェンコは上品なインテリで、毅然とした政策の遂行ができると思えない。今回の『革命』の資金はすべてアメリカがつぎ込んだものにちがいない」という意見です。常に政府をボロカスにくさしている彼女がこういう考えを持っているというのは、ちょっと意外でしたが。

 『イズヴェスチヤ・ウクライナ版』は、ずっと露骨にヤヌコーヴィチ氏支持でしたが(クチマ大統領寄りの統一社会民主党が『ウクライナ版』のスポンサー)、最近やや客観的な書き方になってきたような気がします。同紙ロシア版の記事で、ウクライナ版にも転載されている週間TV時評がありますが、この欄に書いているイリーナ・ペトロフスカヤは、2度にわたって、ウクライナの情勢に対するロシアの「愛国的」報道姿勢を批判。まことに立派な文章でした(といっても、いつもの彼女のスタイルで、ユーモアをまじえニヤリとさせる表現には事欠きませんが)。 

                             2004.12.20    竹内高明(在キエフ)