キエフから緊急情報その2
私は大統領選決選投票前日の20日からずっと風邪で
寝込んでおり、ニュースも逐一把握できてはいないのです
が、24日夕刻キエフ都心の独立広場での抗議集会、クレ
シャチク通りに出現したテント村の様子をちらと見た感じで
はまさに穏やかな祝祭感というか解放感があふれており、
都心に限らず、街を歩く人たちの多くは上衣の袖や鞄に
ユシェンコ氏のシンボル・カラーであるオレンジ色のリボンを
結びつけて不正選挙への抗議の意思表示をしています。
最高会議で決選投票が無効と承認された後の28日夜でも、
独立広場での抗議集会はとどまる気配を見せていませんが、
参加者に多少疲れの色が出てきたような感じがしないことも
ありません。
インターネットで日本の新聞のサイトを見てみると、この件に
関し毎日詳しく報道があるのに驚かされました。モスクワから
出張してきた記者たちがせっせと働いているのでしょう。
でもこんなにウクライナのことを心配してくれるのなら、も少し
ふだんからとりあげてほしいなと思ってしまいます。
日本のマスコミは、国内外のいずれについても「出来事重視」の
傾向が大きすぎるという気が私は昔からしてるのですが。
「大統領選は、親ロシア派の与党候補ヤヌコビッチ首相と、
対立候補で親欧米派の野党勢力指導者ユシチェンコ元首相が
争った」という一文が某紙のサイトにありましたが、今オレンジ
のリボンをつけて路上に出ている人たち(若い人が多いですが、
年配の人も混じっています)がみんな「ユシェンコ支持者」なのか、
というと、以前から私が書いていますように、これは10年続いた
現クチマ大統領の非民主的金権体制とその隠れもない継承予
定者であるヤヌコーヴィチ氏への「否」の意思表示であって、
特に選挙運動期間中の情報操作・選挙時の不正に対する、
国民をなめるのもいいかげんにせえよという民衆の気持ちの
自発的表現であると思います。
「ユシェンコ」はその合言葉的なものと考えた方がいいでしょう。
私の友人の大学講師(マクロエコノミクス専門・30代前半)は
「ユシェンコはエコノミストとしては優秀だが、政治家としては
優柔不断だ」という以前からの意見ですが、連日のように
抗議集会に通っているそうです。
政府系のTV局でも、与野党両陣営の議員をスタジオに
登場させて議論させるスタイルの番組が出てきています。
先行きはまだまだ不透明ではありますが、この民主化の
過程(民意の尊重、体制側の情報操作の自粛)に後戻りは
少なくともありえないのではないかと私は今のところ希望的
観測をしています。
2004.11.28 竹内高明(在キエフ)