大統領決選投票 11月21日
ヤヌコーヴィチ候補か、ユシェンコ候補か
10月31日の大統領選挙の結果は、11月3日に中央選挙管理委員会の
中間発表(開票率97.67%)で現首相ヤヌコーヴィチ氏39,88%、
野党派閥「我らのウクライナ」代表ユシェンコ氏が39,22%と
いう数字が出た後、「コンピュータ・システムの故障や地方選管の
報告書類の不備」が原因で集計が大幅に遅れ、憲法に規定された
期限ぎりぎりの11月10日に最終結果発表がありました。
それによるとヤヌコーヴィチ氏39,32%、ユシェンコ氏39,87%。
第3位の社会党党首マローズ氏(得票率5,83%)はユシェンコ氏と
政策協定を結び、11月21日の決選投票に向けてのユシェンコ氏
支持を表明しました。
協定の中には、例の憲法改正案(大統領の権限を縮小し、最高会議
の権限を強める)を来年1月1日までに最高会議で可決し、2006年
1月1日までに施行する、という項目も含まれています。
第4位のシモネンコ氏(得票率5,03%)が率いる共産党は、決選投票の
2候補のいずれをも拒否する大会決議をしました。
ロシア共産党の党首ジュガーノフ氏は、ヤヌコーヴィチ氏支持の
姿勢を明らかにしていますが。
第1次投票に際しては、選挙人名簿の不備(投票所に行ったら、
自分の名前が名簿にない。あるいは名前が間違って登録されている)、
同一人の重複投票や代理投票などの選挙違反が指摘されており、
集計に時間がかかったのも、投票数のごまかしに手間取っていた、
あるいはユシェンコ氏優勢の発表を最後まで引き伸ばしていたのでは、
との臆測がなされています。
しかし、体制側のあらゆる手段を用いてのヤヌコーヴィチ氏支持・
ユシェンコ氏攻撃にもかかわらず、ユシェンコ氏が善戦したのは、
現体制に対する国民の嫌気の表明といえるでしょう。
10月28日、6つのTV局(前に5つと書きましたが、別メディアの
報道では6つ。こちらの方が、局名を列挙してあり、より具体的)の
職員が、選挙報道に関する体制側の圧力に抗議する声明を発表。
間もなくこの声明に同調するTV関係者が200名を超え、その影響も
あってか、現在では政府系のTV局のニュースでも、ユシェンコ氏が
画面に登場しています。
しかし、「某市で選挙がらみの喧嘩があり、ヤヌコーヴィチ氏支持の
A氏がユシェンコ氏支持のB氏に殴打され入院した」「公正な選挙を
求める青年組織のメンバーがキエフに借りたアパートで流血の争い
があり、調べに対してメンバーたちはユシェンコ陣営から資金援助
を受けたことを認めた」といった、どう見てもでっち上げ、あるいは
少なくとも加工された低次元の情報が、政府系TV局のニュース番組
では流され続けています。
大手国営企業では、「ユシェンコ氏が政権を握れば、90年代の
経済混乱が戻ってくる」と、従業員を巻き込んだヤヌコーヴィチ氏
支持キャンペーンが行われています。
しかし90年代の混乱の中うまく立ち回って甘い汁を吸い、
肥え太ったのが、現政府の政治家たちとその周辺の財閥だという
多くの国民の認識は変わらないでしょう。
2004.11.14 竹内高明(在キエフ)