北海道多言語シンポジウム報告

ロシア語通訳協会北海道支部代表

大島剛

228日(日)札幌市産業振興センターで多言語シンポジウムを開催しました。主催は北海道通訳者協会(HICOM)とロシア語通訳協会北海道支部で、札幌市国際プラザの後援をいただきました。このシンポジウムはHICOM創設10周年とロシア語通訳協会30周年を記念して企画したものです。まだ寒い、マイナス気温の札幌にも関わらず、106名の参加者(HICOM23名、ロシア語関係27名、一般56名)が来場しました。150名の会場を予約しておいて良かった。

このシンポジウムの企画運営はHICOM多言語委員会。私(大島)が委員長を任されています。英語以外のロシア語、中国語、韓国語、ドイツ語、フランス語の通訳者がメンバーです。実を言うと、この委員会は3年ほど前に設置されたのですが、飲み会以外の行事はやっていなかったので、罪滅ぼしも兼ねて、全員で力を合わせて準備しました。

シンポジウムは13時〜17時の4時間。第一部は講演、第二部が多言語パネルディスカッション。基調講演は北海道で数多くのコンベンションを手がけ、常にエイジェントとして通訳翻訳者の手配をしてきたE.C.PROの久松伸一氏にお願いしました。42枚のスライドを使って通訳者の役割と重要性について、「外国語を話せる能力と通訳する能力は別個のもの。通訳者を通訳と呼び捨てするのはおかしい。通訳者は弁護士や医者と同じように高度な専門家として扱われるべき。国や大学が率先して良質の通訳者養成をすべき」と語りました。次に私が「通訳者の心得」という題で講演しました。これは会議通訳者を目指す若い通訳者が私の所に来た時に行っているレクチャーを再現したものです。「通訳者にとって語学ができるのは当たり前、一番大切なのは教養と常識と日本語力である」と話しました。

2部は多言語通訳者の登場です。最初は各言語のネイティヴスピーカーが「日本と日本人の印象」について各言語で1分スピーチするのを、パネリストが通訳。国によって日本や日本人の見方が微妙に異なり、通訳のスタイルもさまざまで楽しかった。その後、司会者の話す単語:日本、英国、ロシアなどをリレーで通訳し、動物の鳴き声を紹介し、「北海道は日本の最北の島です」などの文章を訳しました。「オレオレ詐欺」が各国でどのように紹介されているのか日本語で説明をしました。この2つのパーツで会場の人に各言語の響きを楽しんでもらいました。次は各パネリストが「北海道における各言語の通訳翻訳事情」を5分間スピーチしました。6言語なのでこれだけで合計30分です。最後にディスカッション。残りは1時間弱となりましたが、3名のコメンテーター(北海道を代表する英語会議通訳者)に登場してもらい、いままで語られたことを深く掘り下げてもらい、会場を代表してパネリストに質問してもらいました。

会場にはクライアントである行政の職員、民間会社の社員、エイジェント、教育関係者、語学学習者、通訳翻訳者、またロシア総領事館から領事とアタシェも参加してくれました。函館と根室からの参加者もありました。多彩な顔ぶれで準備の苦労が報われた気持ちでした。多くの関係者に北海道の外国語通訳翻訳事情の全体像を示すことができたと思います。